体のうちヒトの部分は10%しかない、というのをご存知でしょうか。
実は、血や肉、骨、脳などの体を構成する細胞1個につき、9個の微生物が体の中に存在し、あなたという存在をつくっています。
彼らは体の皮膚や間隙、穴などあらゆるところに住み着き、体を守ったりコントロールしたり。腸管内だけも、100兆個の腸内細菌がいてサンゴ礁のようにひっそりと暮らしているのです。
なに勝手に住み着いてやがる!
なんて、思わないでください。
まだその全容は解明されていないものの、実は一般に知られている以上にすさまじい働きをしてくれています。
今回は、そのあまり知られていない「体に住む微生物たちの働きと関係性」についてご紹介します。
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栄養学なんかはよく分からないという方も、腸科学はきっと面白いですよ。
体に住む微生物は免疫系や脳と深く関わっている?!
体に住む微生物で代表的なのは腸内細菌。
腸活などメディアに取り上げられるようになってからはよく知られるようになりましたが、彼らマイクロバイオータはざっくりいうとこんな働きをしています。
- ヒトには消化できない食物繊維から栄養を吸収する
- 健康維持にかかせない化合物を合成する
- 外から侵入する有害物質が入り込むのを防ぐ
最近では、がんや糖尿病、アレルギー、喘息、自閉症、炎症性腸疾患などの現代病から肥満や疲労にも深く関わっていることが分かっています。
また面白いのが、実は腸内細菌が脳を操っているのではないか、といわれていること。
まだ分かっていないことも多いですが、脳腸軸とよばれる通信網を通して、どのくらい空腹か、幸福を感じているかなどを常にフィードバックしています。ご飯を食べると幸せを感じたり、ストレスを感じるとお腹が痛くなるのも、これのせい。
また、無菌マウスは物忘れが激しく、記憶力とも関係あるのでは?といわれています。
他にも皮膚や口内など様々な場所で微生物が生活していますが、おおむね私たちの味方をしており、守りの弱い入口で侵入してくる外敵を締め出してくれているわけです。
ただ、実はここ数十年で私たちの体の腸内細菌の種類や数は減りつつあります。
そして、それが喘息やアレルギー、慢性的な疲労や肥満など、様々な現代病につながっていることが分かってきました。
その原因としては主に2つ。
- きれいすぎる社会
- 腸内細菌たちのエサ不足
それぞれ詳しくみていきましょう。
衛生的な生活が人を狂わせている?!
抗生物質のような医薬品や、下水道、衛生的な食品などのクリーンな社会により、人は平均寿命を大きく伸ばしました。
しかし、これには副作用も。
例えば、抗生物質。
これは、感染症などにはかかせないものですね。でも、これによって腸内細菌は大きな巻き添えを食らいます。
まずは腸内細菌たちが狭い部屋の中でひしめき合っているのをイメージしてみてください。
そこに抗生物質という爆弾が投下されるとどうなるかというと
- 爆弾が落ちた場所にいた善玉菌や悪玉菌が消滅
- ぽっかりと大きな空間ができる
- これを繰り返すと、空間ばかり
- 悪玉菌が勢力拡大したり、薄くなった腸壁から有害物質が入る可能性が増
というわけです。
定番の除菌シートや薬用ソープなんかもそう。
私自身、飲食店時代に消毒のアルコールを使い始めてから手がすぐ荒れるようになったなぁ、と感じていました。が、これは肌に住む有益な微生物まで殺してしまい、免疫力のない弱い肌になっていたようです。
もちろん、体内に入ると有害なものも多いので、除菌は大事。抗生物質も感染症などの治療にはかかせません。
でも、腸内細菌の生態系が元どおりになることはない、ということを覚えておきましょう。
抗生物質ならたった1回の使用でも腸内細菌の1/3が死に、半年ずっと元どおりにならなかったという研究もあります。
少なくとも、むやみやたらに抗生物質を使うのではなく、本当に必要かどうかお医者さんと話し合うことが大事です。
腸内細菌は食糧難にあっている?!
第二の原因としては、エサ不足があげられます。
これは、基本的には腸内細菌のエサのこと。
食料が豊富にあって、食べすぎともいわれる社会にいて、腸内細菌のエサ不足とはどういうことでしょうか?
意外だと思われる方もおられるかもしれませんが、実は、腸内細菌は炭水化物を好んで食べます。
しかし、彼らは大腸に多く住む友人。
ブドウ糖や果糖といった単糖類、ショ糖などの二糖類、そして多糖類であるでんぷんの大半は小腸で消化・吸収されてしまいます。
なので、大腸にはほとんどエサが流れてきません。
来るのは、小腸で吸収されなかった少しの食物繊維。それも100兆個も住む腸内細菌たちの取り合いになってしまう。
そこで、なんと彼らは腸壁の粘膜層を食べ始めます。
そして最後には、耐え切れずに消滅してしまう種も出る。
こうしてできた隙間に、悪玉菌という悪さをする菌が増殖しようしたり、薄くなった腸壁から有害物質が入ってきて体調を崩してしまうわけです。
腸内細菌と仲良くするには?
では、腸内細菌にエサを与えたり、腸内細菌の多様性を増やしたりと、
あなたの体に微生物がもどってきてもらうにはどうしたらよいのでしょうか?
いくつか方法はありますが、ざっくりまとめると3つです。
- 普段の食事を見直す
- 適度な運動をする
- 友達を増やす
1と2はなんとなくイメージできると思います。
3はどうゆうこと?って思うかもしれませんが、他の人と交流して、細菌の交換をするってことです。恋人がいれば、キスやスキンシップをどんどん増やせばいいですし、人と握手するだけでも細菌の交換は行われます。
もちろん、ペットを飼うって手もあります。その時は、寄生虫とかの危険もあるんで糞便の処理だけは注意してください。
でも、手軽に改善できそうなのは、やはり1の食事の見直しの部分ですね。
今、注目されているのはシンバイオティクスという方法。
次回は、その部分を詳しく書いていきますー!